親が示談金を工面することについて|代表弁護士が解説
息子さんが性犯罪等で逮捕され,早急に被害者の方と示談をしなければ勾留が長引き,起訴されてしまう場合に,事件を起こした本人である息子さんご自身では示談原資を用意できず,ご両親などご家族が全て工面し,弁護士を通じて被害者に支払って示談を成立させることがあります。
以下,お子さまの示談金をご家族が工面することについて,代表弁護士・中村勉が解説いたします。
被害弁償,そして示談成立という事実は,犯行後の情状事実としてとても重要です。というのも,そうした犯行後の事情は何よりも加害者の反省の気持ちを表しているからです。
ところが,その示談原資が本人ではなく親が用意したとなれば,示談の成立も加害者にとって有利な事情とは言えないのでないか,という疑問が当然生じてきます。何でも親頼みで,弁護士費用も示談金も全て親に頼るという甘えは,やはり一人前の社会人として責任感に欠けるとも思われます。
しかし,そうであっても,やはり示談が成功したという事実は有利な事情として大きく考慮されます。何故でしょうか。
性犯罪のような被害者の法益を侵害する犯罪は,例えば,放火罪や公務執行妨害罪のように社会的法益,国家的法益を侵害する犯罪と異なり,もっぱら個人的法益を侵害する犯罪ですので,その侵害された法益の主体たる被害者に対する被害回復がなされたかどうか,許してくれたかどうかは,たとえその示談原資を工面したのが親であったとしても刑事処分の内容に大きく影響するのです。
息子としても親に迷惑をかけたという意識が強まれば,反省の情も深まり,立ち直らなければという姿勢が生まれてくるでしょう。また,後でその示談原資を働いて親に返すときには,改めて事件を振り返って反省の気持ちを深める機会となるに違いありません。
肝心なことは,本人にそのような気持ちをもたせることなのです。それが更生,社会復帰に繋がるからです。中には,そうした親の気持ちがわからず,また,親が直接我が子にそう説諭してもお子さまの心に刺さらないこともあります。逆に反抗するような社会的に未熟なお子さまもいるかもしれません。そんなときに,弁護士が諭すということも大切であり,当事務所の弁護士も実践しているところです。