それでもやっぱり我が子を心配します|代表弁護士が解説
親御さんではなく,本人からの依頼であっても,我々弁護士は親御さんに連絡をとることがあります。誓約書を書いて欲しい,保釈の身柄引受人になって欲しい,情状証人になって欲しい,示談金の工面にご協力いただけないかなど,刑事手続の中で色々とご協力をお願いすることがあるのです。
以下,代表弁護士・中村勉が解説いたします。
中には,「これまで散々親に迷惑をかけてきて,その度に尻拭いさせられて,もう金輪際,面倒を見たくない」と頑として協力を拒否する親御さんもいます。「親に向かってあんな捨て台詞を吐いて家を出て行った息子が,自分が困ると泣きついてくるのが情けない。ここで手を貸したら息子は一生自立できない。」と仰った親御さんもおりました。
弁護士はその親子の長い歴史,生活の中で偶々ご縁あって関わることになった者に過ぎません。他人様と言えば他人様です。とても声を大きくして「それでは息子さんが起訴されてしまいますよ,刑務所に行ってしまいますよ」などと言える立場ではありません。弁護士は,所詮,目の前にある担当事件がうまく行けば成果を上げられる職業なのですから。事件が終われば「他人様」に戻る弁護士が,それまでどれほど苦労してきたかを知らない親子関係にどこまで首を突っ込むことができるでしょうか。弁護士がいつも抱える悩みなのです。
しかし,大きな声で正論を言うのがおこがましいときであっても,そうした親御さんの話を親身に聞くことはできます。そして,多くは,言いたいことを全て吐き出した後に,「やっぱり息子のことは心配だ,見捨てることはできない」という気持ちになることもあります。弁護士には,あれほど息子の不甲斐なさ,自業自得を訴えていた親御さんでも,弁護士に面会してくださいと背中を押され,警察署に足を運ぶや,牢に繋がれた弱々しい息子の姿を見て涙を流す親御さんもいます。
弁護士はどんな思いもどんな悩みも聞くことのできる唯一の存在です。