痴漢や盗撮事件から立ち直るために|性犯罪弁護サイト

痴漢や盗撮事件から立ち直るために

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痴漢や盗撮事件から立ち直るために|代表弁護士が解説

 痴漢や盗撮は,刑罰としては比較的軽く,ほとんどのケースで不起訴ないし罰金刑で終わります。しかし,痴漢や盗撮の怖いところはその常習性であり,一度,警察沙汰になって,懲りているはずなのにまた同じ行為を繰り返してしまうという点です。特に,痴漢や盗撮で検挙されても逮捕されないケースにあっては,職場のみならず親にも知られないで,自分のお金で弁護士を雇い,示談金を支払って不起訴になることがあり,自分が罪を犯したという自覚も希薄なまま,やがて忘れ去り,そして同じように痴漢や盗撮を繰り返すという人もいます。
 中には,「罰金を払いさえすればいい」と考えて,弁護士も雇わず,示談もせず,謝罪すらせずに罰金を支払って終わりとする方もいます。
 また,親御さんにあっても,お子さまの痴漢ないし盗撮事件を知ったものの,罰金を払えば済むと軽く考える方もおり,その病根である常習性,難しい言葉で言えば性嗜好障害に気づかずに放置してしまうことがあります。
 最悪でも罰金刑で終わる痴漢や盗撮も,2回目,3回目となると罰金では済まず,起訴されることになります。最初は執行猶予判決であっても,その執行猶予期間中に再犯となれば実刑となって刑務所に行かなければなりません。それを回避するためにも性嗜好障害という病根に正しく向き合わなければなりません。

 こちらのコラムでは痴漢や盗撮事件における常習性や再発防止のためにできることについて,代表弁護士・中村勉が解説します。

性犯罪の原因とも言われる「性嗜好障害」について

 相手との関係において,適切,正常に(もちろん相手の同意の上で)性的行為を行うのではなく,犯罪となることを認識しながら,そのリスクを冒してまで違法な態様で性的行為に及んだり,異常な頻度で性風俗に通うなど,要するに,自己の性的衝動を自分でコントロールできなくなる状態を性嗜好障害と言って良いと思います。いわゆる性依存症なのです。異常な頻度で性風俗を利用すること自体は犯罪ではありませんが(強迫的性行動症とも言います),SNSなどを通じて相手を求め,性的関係をもつと,対象者が18歳未満であることもあって,やはり犯罪に繋がるのです。
 こうした性依存症の原因は,医学的には「認知の歪み」にあると言われ,大雑把に言うと,自分が相手にこの性的行為をしても(例えば電車内で痴漢をしても)相手の被害意識はそれほどでもないと軽く考えたり,極端には,相手がむしろ望んでいるに違いないなどと勝手に思い込んでしまうような,そのような「思考の癖」を認知の歪みと言います。
 これは「癖」ですからそう簡単には治りません。相手に咎められたり,警察沙汰になったりしても治るものではないのです。もちろん,一時的には懲りてしばらくの間,行為は控えるかもしれません。特に警察に逮捕され,親にも知られて叱責されたときには,「もう二度とこのようなことはしない」と心に誓い,反省するでしょう。その反省の気持ちは真実なのです。
 しかし,性嗜好障害という依存症の治療をしないまま,社会生活に戻ると,同じ場面に遭遇したとき(満員電車で体が密着するような場面),残念ながら同じ行為をしてしまうのです。皆さんも普通の生活の中で「頭で分かっていてもやってしまう」ということが,反社会行動ではないにせよ,あるかと思います。それほど癖というものは根が深く,扱いが厄介なものなのです。

性依存症犯罪に対する弁護活動について

 さて,お子さまが痴漢や盗撮などの性犯罪で逮捕されたとします。面会に行くと彼は涙を流して詫びます。親ですから子供の反省の気持ちは深いと理解します。当番弁護士から選任された弁護士とも今後の見通しなどについてアドバイスを受けるでしょう。弁護士は,親御さんに「お子さまは今回が初犯であり,今は認めて反省しているので,勾留されずに釈放されるでしょう。示談ができれば不起訴となって前科も付きません。元通りの社会生活を送れるのでご安心ください。」と説明するでしょう。
 こうした弁護士の見通しなりアドバイスは全くその通り正しいもので,現に勾留されずにすぐに釈放となり,弁護士の力で示談となりさえすれば不起訴処分となるのは間違いありません。
 ただ,ここには対象犯罪が依存症犯罪であることへの対応が欠落しています。酔って喧嘩をしてしまった傷害事件と同じ弁護活動で終わってしまい,性犯罪行動の根源にある「認知の歪み」,「思考の癖」への対処は手付かずに事件としては終了してしまうおそれがあるのです。これでは再犯に繋がってしまう可能性があります。
 当事務所で取り扱った痴漢や盗撮の事案で再犯のケースでは,初犯の際に何ら性依存症治療をしていないケースが少なくありません。中には4犯目というご依頼者もいて,とうとう実刑判決となってしまい,何とか控訴審で逆転執行猶予をとりたいと当事務所の門を叩く方もいました。それほど依存症犯罪において真の更生は難しいのです。

当事務所による性依存症犯罪に対する弁護活動

 当事務所では,依頼者の方に性依存症に対する専門治療を受けることを勧めています。たとえ何も対策を講じなくても不起訴となる事案であってもです。そして,そういう事案こそが本格的に治療を受けるチャンスなのです。刑務所においても昨今性犯罪に対する特別プログラムがあるようですが,刑務所に行ってからでは遅いのです。当事務所には,提携している専門クリニックも複数あります。
 事件となれば親御さんを含めた周囲の関係者が,その行く末に強い関心を持ちます。逮捕されなかったら永久に「癖」を治さないまま,リスクにまみれた人生を送っていたはずですし,親御さんもお子さまのそうした「癖」に気づきません。逮捕され,事件となった機会こそ,真の更生のためのチャンスなのです。当事務所は,そのチャンスを逃すことのないよう,再犯防止を含めた弁護に努めています。


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